もう初夏と言って良いでしょう!春はいつだった!?雨季はいつだった!?
なにか地球がおかしくなってしまったと思いませんか?
そんな暑いお稽古場では振付作品の撮影が進んでいました。なんと冷房をかけながら撮り続けたのは「雪椿」でした。ジャンジャンジャジャ~ン・・・と始まるあの名曲。
確か昭和の終わり頃大ヒットした小林幸子の名曲ですね。と言うより遠藤実の見事な作品です。作詞、星野哲郎さんも驚いたこのメロディーは久々に一世を風靡しました。
この作品はお客様のリクエストで制作したものですが、名曲はいつになっても人の心を捉えるものです。
波島はエルトンジョンでも何でも振付けますが、たったひとつ大きなこだわりがあります。
つまり、どんな作品でも頼まれれば制作するものではありません。
何故なら、心に響く旋律・歌詞でないと取り組めないというのです。考えてみれば確かに今まで振り付けた作品にはそれぞれに心に入り込める要素でいっぱいです。
だから、上手いと言われる歌唱力でないと「手がつかない」というんです。そうかも知れませんね。歌も、踊りも心で唄い心で舞えるもの。だから観る者の心を奪えるのでしょう!
私も昔から企画の仕事に関わっていたのでそこはとても良く分かります。しかし、なかなか美しい舞台に出会うことはありませんでした。
簡単に言えば、歌謡曲や演歌を踊る事を「新舞踊」と言っていますが、この新舞踊は日本全国に普及し今やその愛好者の数はとても多くなっています。
子供の頃からどちらかと言うと日本舞踊より新舞踊を多く見ていたんでしょう!それを日本舞踊とも思っていました。日本舞踊でもない、民謡でもない!舞台に流れる三波春夫や美空ひばりの歌声。そうした楽曲に合わせて踊っていました。そうなんです。それが新舞踊です。
しかし、波島陽子という舞踊家に出会いそのイメージと価値観が一変してしまいました。
波島の踊りを一度でも見たことのある人なら納得されていると思います。
この美しさは何なんだろう!!!そうなんです。一言で言えば「美しい」の一語に尽きるからです。勿論、そこには創り手(波島)の大きなこだわりが垣間見れます。
新舞踊でありながら、古典や日本舞踊の基礎をとても大切にし、言葉(詞)をとても大切にする作品が観衆(ひと)の心をつかまない訳がないということですね。
ヒットする歌には間違いなく人の心に入り込む不思議な力が働いています。それは舞踊でも同じじゃないでしょうか!?それを心で踊るんだから感動しない訳がありません。
先日、外国人20名ほどの前で舞踊を披露したときのことでした。日本の言葉が分からない・・・!そこで事前に作品のストーリー(意味)を説明し、それから踊ってみました。
するとどうでしょう!!鳴りやまない拍手とその興奮がそのまま伝わって来たときは「さすが」と思いました。
昨年、浅草公会堂での生徒さんの発表会でもそれは如実でしたね。ご存知のように発表会ですから、親戚や友達・同僚やご父兄等々が応援を兼ねて会場に駆けつけます。
しかし、応援に来た本人の踊りの出番が終わって1時間もその後会場に居れば良い方でしょうね。悲しいかなこれはどの団体も多かれ少なかれその傾向は免れないようです。
ところが、波島の舞台(発表会)はそこが大きく違いました。つまり、殆どのお客様は帰らず、しかも7時間という長時間舞台にもかかわらず釘づけになっていた事実です。
全て波島のワンマンショーではありません。その殆どは生徒さんの舞台です。
つまり、問答無用で舞台に感動しその美しさに酔いしれていたに他ならないのです。
勿論、多くのお便り、メール等で頂いたご感想で裏づけられたのですが。ご年配の生徒さん、若い生徒さん、おそらくご自分が踊っていて一番感じていることだと思います。
スマホ等ネット社会になり、2歳のお子さんですらスマホの画面に慣れ親しんでいる時代です。国民の全てがそうだとは言いません。それでもスマホを巧みに操る若者が生徒の大半を占めています。
懸念することがあるとすれば、正しい心を養って欲しいな~と願わずにはおられませんが、それでも日本舞踊を習いたいと通う若者は素晴らしい人が多いです。
家元がさも簡単に作品を創っているかのように思うかも知れませんが、完成に至るまでの苦しみを知っているだけにそうしたことを通じ、心で踊ることを学んで欲しいと思っているところです。
芸事は5年や10年で会得できるほど簡単なものではありません。その辺の理解のある生徒さんと短期間で身に着けたいとする生徒さん。奥の深さに触れるには10年はかかるでしょうかね。
ビデオ撮影をしていてその深みに触れる瞬間があります。この写真のように、音楽に合わせてのこの場面にその深みを知るのです。カメラを回している者の特権のようにも思いますね。
歌は心で、まさに踊りもそれ以上です。言葉の分からない外国人からの一斉の拍手がそれを物語っています。
授業料が高いと言われるこの業界!格式や伝統を重んじるがために窮屈ではないかとするイメージ。まったくそうでない優しさに包まれた教室はこうした作品のように、多くの若者に一人でも多く楽しんでもらいたいとする家元の気持ちが通じ多くの若者に楽しんでもらっています。
いつか、師匠のように「心で踊れる」若者を育てたい。プロデュースする者にとっての願いですね。日本の素晴らしい伝統を、そして文化を伝えたいとする家元。この気持ちをくんでくれる若者が一人・・・、二人・・・と増えることを願って止みません。
浅草の雷門という立地と、波島の心で、今回の作品のように心で踊れる生徒さんを育てたいと思っています。
今日も、「体験したいのですが・・・」ようやく毎日のように届くお問い合わせです。
心を大切にできる若者を育てたい!この願いを基に素晴らしい若者を育てたいと思って止みません。