正しい稽古の有り様

特に秋口は芸術の秋なんでしょうか!?私のところへもいろんな若者から自主公演への招待を戴きます。
こうしたグループ(チーム)は都内だけでも相当数あるように思う!!みんなお芝居が好きでアルバイトをしながら続けているのが現状。
勿論将来はタレント、或いは役者として舞台に立ちたい!映画やテレビに出演したいと夢みる若者たちです。

私も20歳代前半に3年ほど某劇団に通っていたことがありましたが、何も知らなかったせいか、それと欲がなかったのか・・・、ただお芝居が好きというだけで通っていた頃を思い出します。今でもその劇団は各テレビ局に役者を送り出していますが、当時はみんなでお芝居をすることだけが楽しかったように思いますね。

当然アルバイトをしながらですから今考えると若かったな~と感心するばかり。
一度丸の内のイイノホールでお芝居をやったことがありましたが実に楽しかった。
でも、何故か舞台俳優になりたいとかの目標があった訳ではなかったですね。
性格上、人と話すことが好きでデパートの販売員を皮切りに長いこと小売店で働くことになりましたが、私にはこの演劇の経験は将来にとても役に立ちました。

さすが東京だなって思うのは、現在日本舞踊教室を運営しているからなのか、役者に成りたい・・・、歌手に成りたい・・・、つまり芸能畑で活躍したいと夢みて来る若者にとても沢山出会います。
世はアイドル時代ということも手伝って本当に多くの若者がアルバイトをしながら等々頑張る姿に出会うのです。
ただここで怖いことがどうしても頭から離れません。希望や夢を持つことは決して悪いことではありません。しかし、劇団に入っているだけですっかりタレント気分でいるという怖い人もいるということです。
伝えたい・・・、教えたいのは、やりたいことと出来ることは別だってことです。
現在活躍中の50歳代以上の有名な役者さんを沢山知っています。
確かに彼らは20代のチンピラ役から始まってその芸能生活は30年40年はざらです。
しかし、不思議なことは、その役者さんにはそれぞれにみな個性があり味があったということです。
私が現在気になっていることは、現在の若者にその「味」が無いことです。
どう表現すれば良いのでしょうか・・・!!つまり、深みとか情緒、空気感のようなものがすべてわざとらしくまったく演技になっていない・・・という現状を危惧しているのです。

これは、経験が無いということではなく、やはり現代の社会情勢で育った若者のどうすることも出来ない現象なんだと思います。

人の話をしっかり聞くとか、心の触れ合うまさに日本人としての空気が無く、渋谷等で出会うスマホを持った人間の味の無さがそう映るんではないかとさえ思いますね。

先日、当教室にあるテレビドラマの撮影班がやって来て1日中撮影をしていました。
若い男優が日舞のお師匠さん役でそこへ若い女の子が日舞を習いに来る下りでしたが、正直唖然としました。
演ずる若者もさることながら演技指導をしている青年が作品を創るに何かが足りなすぎるんですね。
この一場面を観ただけでも全てが分かります。これでは素晴らしい日本が失くなってしまうようで本当に悲しかった。
だからと言って私がどうすることも出来ない訳で、せめて私が主宰する教室からはそうした若者にならないようにと思うだけです。
その撮影現場では少しだけでもと演技にアドバイスを与えました。監督も納得したのかいくつか私に演技(しぐさ等)のアドバイスを求めました。
驚いたのは出演者がまったく挨拶無しで帰ったことです。私が威張ってものごとを言っているのではありません。本当の礼儀を知らないという悲しい一幕でした。
演技、つまり日本の文化はまさに美しい日本人ならではの礼儀にあると言っても過言ではないでしょう。

昨日も1人の女性がお稽古場にやって来ました。もう1年も前にお稽古を辞めたタレント志望のお嬢さんでしたが、確かに綺麗な女性です。
女優になりたくて日舞のお稽古に通っていましたが、どこかの劇団に所属していたらしく公演の都合なのかどうか知りませんがいつの間にか来なくなっていました。
いつの間にか来なくなった!!!ここが問題なんですね!

昨日の用件は、今回自分が出演するお芝居に波島先生をご招待したい・・・とチラシを持って来たものです。見えるのは券をさばかなければならないというノルマです。
日頃から素晴らしい人間関係があればきっとその前売券は先生の力で10枚や20枚はさばけると思います。
「中に先生いるから直接先生にご招待状お渡ししたら・・・」というと、封筒に走り書きで「良かったら来てください・・・!」と書いて渡して欲しいと帰りました。
若者が知らないところはそうした点です!!きちっと礼儀を尽くし、日頃から交流があってお願いするのならともかく、ちょっと知っているくらいで劇場に来ていただけませんか・・・と行動出来る怖さ。
私が知っているある団体の主宰者もその通りです。日本の伝統文化に関わることを広く知らせたいと頑張っていますが、その心は日本の文化とは大きくかけ離れているのです。
礼節を欠く者が主宰者ではそのチームの目的は決して果たせません。
少しくらいちやほやされて自分は別ものだと豪語するその謙虚さの無さ。こうしたチームにただカッコ良いからと群がる若者。本当に怖く危険です。

誰が何をやろうとみな自由です。勿論私がとやかく言う必要はどこにもありません。
青春時代の過ごし方はそれぞれあって「こうあるべき」という定義は付けられません。
ただひとつ言えるとしたら、正しい日本の文化を守り継承して欲しいということです。

正しい稽古の有り様

 

確かに自分を磨くためにいろんな経験をすることは大切ですし是非経験を積んで頂きたいですね。

プロに成りたいと思っている若者でさえここまでの厳しい内容が求められますがそれでもプロになれる保証はひとつもないのです。
NHKの大河ドラマなども最近は特にそう思います。エキストラと言って、お芝居をするそのずっと後で通行人をよく見かけます。現代劇ならそう感じませんが、時代劇のそれはひどいものです。
極端な言い方をすれば、歩くときに右足右手、左足左手が一緒に動いているほどひどいものです。
それは何もエキストラだけに限りません。江戸時代。明治大正昭和の良さを指導出来る若者(監督)が居なくなってしまったと言って過言ではありません。

私は、日本舞踊も例外では無いと思っています。生徒にもよく言いますが、綺麗に踊るのではなく、美しい踊り、表現を身につけなさいよ!!と。
特に日本の代表的な文化伝統の筆頭を行く着物にあっては、やはり日本舞踊を徹底して勉強すべきでしょうね。
剣を持って殺陣と称し外国人に見せるその根底にこそ日本舞踊の下地が無い者が持つ剣は決して美しいものではありません。

日本の伝統や文化に関わるみなさんに本当にその意識が無いと全てまがいものになってしまいそうで心配です。

私のところに関わる若者には、そこをこだわって指導し続けたいと思っているところです。つまり本物は残る!本物であれば伝統を継承していけるからです。

夢をみること、憧れることは素晴らしいことです。
しかし、先輩というのはその継承に正しい息吹を吹き込む情熱を持ち続けてもらいたいと願って止みません。
いくら時代が変わっても、本物なら伝わるはずだからです。
大きな夢に向かって、正しい努力の場を若者には見つけて欲しいですね。
頑張っている若者に本気でエールを贈りたいと思っています。

 

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