先日、波島陽子は日本舞踊で初めて観世能楽堂の舞台を踏みました。厳かの中にも艶やかで美しく、登場とともに客席から多くのため息がもれるという素晴らしいものでした。
この写真を見て恩師加藤和郎先生はこんなコメントを添えて下さいました。
「能でいうと、奥から「お幕(おまぁくう)と小さな声がかかって、両幕があがり、シテが登場のシーンです。
真ん中を歩めるのはシテだけで、ワキやツレは壁側の片幕しか揚がらず、そのまま端を通って舞台に向かうのです。ですから、この写真はとっても貴重ですよ。
平成から新しい時代に入ってゆくにふさわしい陽子さんです。」
今回取材を受けた新聞にも載っていましたが、波島陽子のこだわりは「心で舞う」こととそのこだわりを語っていました。それが歌謡曲(新舞踊と言われている)であってもまるで古典に近い上品さがそこに表われる素晴らしい技術なのです。
伝統あるお能の舞台に立っても決して遅れをとらないどころか、何かこの舞台こそ波島にふさわしいとさえ思わせる重厚感のある舞台でした。
特に今回は日本舞踊やお着物を愛する人で埋め尽くされた舞台であっただけに、非常に目が肥えていた人が多かったようです。それだけに、日本舞踊の良さは知っているからなのでしょう。その教えを忠実に学びお稽古を重ねたお弟子さん(波島社中)の舞台にも割れんばかりの拍手、それもまた圧巻でした。
当然多くの波島陽子日本舞踊教室へ通う生徒さんも目を凝らして観ていました。そして口々に「私はなんて素晴らしい先生に習っているんでしょう」「出演者のように私ももっとお稽古頑張ります」「私もこんな舞台に立ってみたい・・・」等々のメールが次から次へと送られて来たのです。
日本の心を伝える伝道師と言って良いでしょうね。それがこの舞台の総括でした。
日本全国に、本当に多くの日本舞踊愛好者がいます。今から十数年前、東京までお稽古に来れない多くの愛好者に「振付ビデオ」を通じて日本舞踊を楽しんで頂きたいとその作品制作に取り組んだことは大正解でした。
2年過ぎ、5年過ぎして今や波島作品で舞台(日本舞踊)を楽しんでいる皆さんは日本国内は勿論、台湾・ブラジル・中国・イタリアと驚くほどの人気ぶりです。
美しさを追求する波島のこだわりは時に厳しく3ケ月してもその内容(振り)が浮かんで来ないというほど。
インド、ドイツ等々に招かれての舞台の美しさは現代にして貴重なものです。先日、韓国の独立記念日の当日でした。現在お稽古に通っている韓国の女性はその記念の日にお着物を着て浅草(教室)にやって来たそうです。「美しいから!!!」そう言って笑っていたそうですが、日本の心に浸っているからに他なりません。
決して「見せる」などというのではなく、日本の伝統を愛する皆さんに「見て頂く」という謙虚さをもって舞台に立つ心こそ見事に「魅せている」んだと思います。
美しい心に触れ、美しい心を感じるということは素晴らしいことだと思います。