指導者としての使命感

 
今年も台東区の教育委員会から依頼を受けて地元(台東区)中学生17名に日本舞踊のお稽古指導をつける日がやって来た。
 
殆どボランテイア状態で引き受け、今年で7年連続となるが、台東区の子供たちにとってはとても素晴しい計画だと喜んでいる。
台東区がデンマークのグラズサックセ市と姉妹都市提携を結んでいる関係から教育委員会が企画したものだが子供たちにとっては最高の学びのようだ。
「台東区国際理解重点教育中学生海外派遣」という名目で日本舞踊はどうだろうと7年前の校長先生(当時の団長)から依頼があったのが始まりだが、私はここで指導者としての使命感を痛感しているのだ。
何でもそうだと思うが、特に日本舞踊等の芸事は一朝一夕になど決して身に着くものではない。まして、指導時間が合計5時間という制約の中では日舞を指導する波島陽子にとっても相当な負担を強いられているのだ。

最近、とくに「おもてなし」などという言葉が一人歩きしていて困惑するのだが、日本人だからこそその心で相手に対処するその神髄は決して他国の真似の出来ない部分ではないかとつくづく感じている。
波島陽子日本舞踊教室にも月に何度か日本舞踊のお稽古をしたいと体験に訪れる若者が絶えないが、面接していてその動機にとても勇気づけられる。
日本人なんだから、着物を着れるようになりたい!、美しいしぐさを身につけたい。
外国に行ったとき、日本の文化を着物(浴衣)や日本舞踊で伝えたいとする若者が少なくないのだ。

今回のデンマーク事業などまさにその夢そのもので、日本の文化や伝統を訪問国の皆さんに紹介したいとして歴代の学生が毎年毎年8月に1週間の計画で出掛けて来た。
お稽古場(学校の)に同席し感じるのが「取り組む姿勢」と「目的意識」、そして、やはりその経験が将来に渡って生きなければなんの意味もないと言うことだ。

昨年の生徒さんの中に、出発式の会場で一人の女子生徒から一通のお手紙を頂いた。
可愛らしいピンクの封筒はやはり中学生らしく初々しくてふしぎな興奮を味わったものだ。
中の文面にはこう綴ってありました。「私は今回このデンマーク行きの一員として何日も研修を重ねて来ました。特に、日本舞踊のお稽古での毎回毎回のお話しが素晴しく、これからデンマークに行きますが、デンマークだけでなく、これから私が高校大学、そして社会人になった時、きっといろんなことで悩み挫折も味わうのではと思います。
そんな時、研修でのお話しを思い出し自分に負けないようしっかりと生きていきたいと思います。」こんな純粋な文面でした。
私は1週間くらいはその可愛いお手紙を枕元に置いて何度も何度も読み返したものです。
人の一生は心が決めると言います。心の持ち方こそこれからの若者に伝えていくべきなんだと思います。

つまり、この心こそ「日本の心」でないだろうか・・・!
ずっとずっといろんな職場で若者を指導してきてみてそれが今間違いなく「確信」に変わっているのが分かります。

「おもてなし」とは、そうした心の持ち方が背景にあってこそ成立するのです。
特定な国を指さなくとも、今でさえまだ自分の事しか考えない国が目立ちます。
間違いを正してくれる人の口を封じてまでも自分の考えを押し通す人や国。
私がいくつかの中小企業の指導をして来ましたが、特に同族会社の醜態にはことごとくあきれ果てるばかりでした。
あの東芝でさえ大事件を起こしてしまいましたね。つまり、その原因の根源は、トップの心の姿勢以外にないのです。

デンマークに行く子供たちは、見ていていつも「夢や希望がいっぱい」と思えます。
それを現実として完成に導いてあげたい・・・と思うのもみな大人たちの責任です。

この中学生たちと、波島教室の門をたたく若者の心根はそう大きな違いはありません。
自分の心で日本舞踊を習いたいと探してやって来ます。
我々はその夢のお手伝いをするのだと決め一歩一歩着実に歩いて来ました。
いつのまにか凄い人数の生徒さんでいっぱいになりましたが、その生徒さん一人一人みな夢は違います。
もし、一緒だとその共通点を探せば、行き着くところは日本人の心なんですね。
この時、日本てなんて素晴しい国なんだろうと思わずには居られなくなります。
最近の若者は到底着物などとは縁遠いと思っている人もいるかも知れません。
中学生が初めてゆかたに袖を通す。何故か嬉しそうなのはどうしてでしょう!
しかし、その浴衣姿の美しさは不思議なほど輝き若者をひきたててくれています。

私が浅草にいて日本舞踊に関係した仕事をしているからではなく、間違いなく浅草は着物が似合う町です。
だから、日本舞踊のお稽古場を探す時、「日本舞踊浅草」「着物浅草」「美しい舞踊」等々で牽策するのではないだろうか!?

台東区の教育委員会が日本舞踊を日本の伝統や文化とし、子供たちを通じて外国に紹介したいとするのは大正解だとおもいます。

私たちはその夢や希望を裏切らないようにお手伝いをする。日舞の稽古や着物体験と称しそれが商売となったとき、そこに間違いなく不安が過ることがあります。
観光客だから着物を着せたらそれで良い・・・!そうでないことがこの仕事を通して本当によく分かります。
先日、アメリカのお客様からお礼のメールが届きましたと申し上げました。
その文面には溢れんばかりの感謝が込められていたのです。「とっても親切にして頂き今までの旅の中でも一番嬉しかった!最高でした。」等々。
本当に大切なことだといつになっても思います。お世話をするって全て人間の心がさせるんですね。

指導者としての使命感

 
波島教室に通う生徒さんから届く嬉しそうな感想に勇気づけられて頑張っています。
波島先生のようになりたい・・・と汗する生徒さん。

波島の目に見えない優しさはきっと生徒さんには無言の「おもてなし」なんでしょうね。

一人で着ることの出来なかった着付け、なかなか動けなかった日本舞踊。
いつの間にか大鏡に映る自分の姿に言葉では表現できない喜びを感じていることでしょう!

指導こそ、繰り返し繰り返し諦めずに行う修行なのかも知れません。
そこに、損得を考えたら決して一歩踏み出せない世界があります。相手を思いやるという「おもてなし」が人と人の心を結ぶのは間違いのない事実です。
人はご存知のように決して同じではありません。恥かしがり屋であったり、頑固であったり、お人好しであったり、友達が居なかったり、彼に振られたり・・・
置かれた環境と持って生れた性格等々はとても計り知れないものです。
しかし、日本舞踊ひとつとっても、全て明るい子が・・・とかが門を叩くわけではありません。
同じように、抱く夢ひとつ取ってもみな違います。

共通点があるとすれば、みな日本が大好きなんです。日本の文化・伝統には、言葉では言い切れない魅力でいっぱいなんでしょうね。

そしてもうひとつ。日本舞踊を習いたいと門を叩く人は不思議とみな素晴しい性格の持ち主だってことです。
心が綺麗なんでしょうね!会っていれば伝わって来ます。会っていれば分かります。

今年のデンマーク行きのお稽古開始を機に、改めてその責任を持ち直しながらその日を迎えたいと思っているところです。
浅草の波島陽子日本舞踊教室が日本中の注目を浴びるのもそう遠くはないでしょう。
何故なら、日舞のお稽古に励む生徒さんの輝く瞳でよく分かります。

 

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