
前回を補足させて頂きます。
私の話す「美しい日本の心」とは、日本舞踊を優しい気持ちで踊ったから等ではありません。美しい日本は段々と薄れているのも事実です。
特に、大都会で日本特有の日本の風情などに触れることは昨今では非常に難しくなっています。
先日、タクシーに乗ったときたまたま80歳近い運転手さんがハンドルを握っておりましたが、その運転手さんは東京生まれなんだそうです。運転手さんが言うには「私が子供の頃は、目黒区界隈は多くの田畑がありました・・・・」と。
私は雪国育ちですからよく分かります。子供のの頃は毎日泥んこになって遊んでいました。トンボやアゲハ蝶を追い、柳の枝を切って刀にしチャンバラごっこ。 大抵の家に縁側がありました。暑い夏、その縁側で蝉の鳴き声を聴きながらトウモロコシや西瓜に舌づつみ。夜の月や星空は童話の世界。風鈴やせせらぎの音を子供でも楽しめたんです。
日本人はこれら大自然から受ける全てが感性となり人間ならではの心が出来上がったようにも思えます。
時代劇での格闘シーンひとつとっても、ススキが揺れ前髪が風に煽られる。特に時代劇の世界(はいけい)は文明の利器など何ひとつありません。
風流であったり風情であったり、物音ひとつしない世界に人の心の鼓動さえ聞こえるほどの時代でした。
日本舞踊等で身に着ける「しぐさ」ひとつとっても、それだけで美しさは際立ちます。
つまり、それら所作には日本人特有の「感性」があいまって不思議な世界を醸し出すんですね。
武士や侍が相手を斬るときのためらい・・・・。その「間」こそが感性なんです。
日本舞踊や時代劇の舞台を観て私は感動のあまり涙したことが何度かありました。
その中でも凄かったのは、大女優の佐久間良子さんの「唐人お吉」だったと思います。クロード・チアリやジョージチャキリスを相手に演じた作品。桜の木の下で自害する下りの美しかったこと。
彼女が悲劇の死を遂げ幕となりますが、なんと幕が降りて5分間は客電が点かないんです。
会場いっぱいの観客全員が泣いていたからと後で判りました。この演出は日本人ならではの細かな配慮(えんしゅつ)だったんですね。
もう1回は、波島陽子芸能生活30周年で見せた舞台の一幕、「人形の恋」(オリジナル作品)でした。
この映像は波島陽子のホームページからも見れますので是非ご覧下さい。
日本人の感性は、現在のインバウンドの要因にもなっていることを忘れては行けませんね。
何故外国人は日本に來るのか・・・!? 私はいつも言います。それは日本が美しいからです。日本人の心が素晴らしいから街が綺麗で、人が親切で、食べ物が美味しく、製品に安全性が高いのです。
昨今の日中問題で観光客が減った!!!「良いではないか・・・」と世界中が口にしているそうです。
儲け一点張りでご存知のようにホテル等の料金がバカがつくほど値上がりをしました。恥ずかしい経営者の多いこと。主たる日本人を置き去りにし特に今年は大変でした。
ここは日本です。どんなに世の中が変わっても、日本人らしい心根や相手を思いやる気持ちは忘れてはいけないんですね。
私も典型的な日本人です。来年は久しぶりにゆっくりと京都を歩いてみたいななんて楽しみにしている一人です。
豊かな感性に包まれ、風情を感じながら夜空を見上げるのも人間の権利です。
大都会で観れなかったら、長野や新潟・・・東北に行けばいい。そこには素晴らしい日本が待っています。
心で感じ、感動できることこそ日本人特有の美しさです。
波島陽子はそれらを決して口にしません。しかし、踊りを通してしっかりとそれ等感性を伝えてるじゃないですか・・・? その奥ゆかしさが作品に見える風情や感性で波島ならではの心なんでしょう。