伝えることの大切さ

「笑顔は自信の表れ」 今年もデンマーク行きの子供たちの指導を終えました。
本当に5時間という短い時間での稽古では当然納得のゆく作品は求められるはずもありませんが、
最後のこの瞬間になんとか安堵を覚えます。
東京都台東区の教育委員会に依頼されて今回で7回目の日本舞踊の指導。
国際理解重点教育海外派遣という事業は区の各学校から選ばれた中学生がデンマークのある都市との
姉妹都市提携の中で毎年その交流を行っているものです。

特に浅草界隈に住んでいるからとこの中学生がゆかたを着れる訳でもない。
日本という観点から、向こうで日本舞踊を紹介しようと渡航行事の中にこの日本舞踊の紹介が選ばれているのです。
最初の発案者の先生(当時校長)はすでに定年退職されましたが、その先生の情熱にほだされて
半ばボランティアとして引き受けることになったのがその経緯です。

当時の校長先生はホームページで波島陽子日本舞踊教室を知ったのがそのキッカケでしたが、
趣旨を貫徹させる為に2~3の教室を探し回ったそうです。
子供たちに「伝える」という役割が果たせる指導者。 これが校長先生の探していた教室なんだそうです。
中学生が自ら日本人として日本の文化に誇りを持てる内容にと先生は熱く語っていたのが印象的でした。
私も、長年高校生や大学生と関わってきた経験からそれはとってもタイムリーな内容でした。
日舞は波島(家元)が教えるにしても、この短期間に5時間は本当に驚異というか恐怖です。
中学生ですから、ゆかたを着るとまだ可愛いですね!フォークダンスのような感覚で取り組まれたらアウト!
そう思って毎年伺いますが最初会ったときの学生たちの顔はまったく緊張感が伺えません。
ゆかたの着付けからたたみ方、そして本題の課題曲(日舞)を5時間ということです。
しかし、選ばれたとは言え子供たちには財産になります。
特に浅草は日本を代表する観光地。
日頃外国のお客様と接していてそれがとてもよく分かります。

中学生にまず訴えることはなんと言っても「日本の素晴しさ」です。
口を揃えて「おもてなし」とかを唱えますが、私はこの5時間を本当の意味で良い指導の機会と捉え
痛烈すぎるほどの情熱で彼ら(中学生)に伝えて来ました。
波島は、依頼を受けてから振付けに入りますが、その仕上がりの素晴しさに毎回感動させられています。
作品の美しさは去ることながら中学生が17名も揃うと圧巻です。
団体で踊るのを群舞と言いますが外国の皆さんには相当美しく映るようです。

「笑顔ですよ!」「はい!ここで笑顔」、踊りが不十分な分せめて笑顔だけは大切にしたいと必死です。
勿論、子供たちは笑顔が苦手なのではありません。
確かに外国の皆さんに比べると表情(笑顔)の作り方が苦手なのは確かです。
恋人の話しを持ち出したり、笑わせたりおだてたり・・・と笑顔を見せる秘訣を教えるのに
いろんな手法を使いますが、考えてみると簡単なんですね。
つまり、笑顔も「伝える」ということのひとつだと言うことです。
伝え方の手法をひも解けば良いだけですが、毎年ここで疑問が湧いて来ます。
デンマークに同行する先生は常時子供たちに接している先生方です。
知っての通り、先生と言っても昔と違って指導に対してはかなりの制限の中で行われているようです。
スパルタとまではいかなくとも、自信をもって引っ張りあげる指導はそこに情熱が無いと
なかなか出来るものではないようです。
子供たちを指導している会話の中で涙を流す先生もおりました。
あとでさり気なく「感動しました」と言われました。
日本人として、日本の文化や伝統をどう伝えるか・・・!
私は整理するのに相当悩み考えました。
日本の素晴しさって何だろう・・・!!?
それは、波島陽子日本舞踊教室で唱っていることこそ日本の文化だということに他なりませんでした!
5年ほど前に整理し、教室での指針にもしました。
伝えるのは人です。人の心です。
これは日本舞踊そのものを踊りで表現するときにとても必要なことでもありました。
心がそのまま美しさとなって見る者をうっとりさせる。
実は最近の振付ビデオ購入者の生の声を電話の向こうで偶然聞くことが出来たのです
今年の3月に初めて波島作品に触れたお客様の声がそれでした。
電話口で作品を伝えられ、お客様の前作品(購入の)が何であったか少し調べている間の出来ごとだったのです。
「しばらくお待ち頂けますか・・・・」直ぐに回答できると思い保留にせず顧客名簿を確認していると
電話の向こうの声がモロ聞こえるのです。
「私、初めて浅草の波島先生の振付ビデオを買ったんだけど、素晴しいわよ~・・・」、
誰と話されているのかは分かりませんが、向こうの電話口のお客様の隣には誰かお友達が居た様でした。
「綺麗で美しいのは勿論だけど、これって波島先生の心そのものなんだろうね!
踊りがこんなに素晴しいとは思わなかった!
春に2本お願いしたんだけどもう波島先生のしか踊れない。
これほど心を上手く表現できる振付師って居ないわね~・・・」
核心に触れた話しだったので悪いとは思いつつほんの少しの間聞き入ってしまいました。

本物ってこういうことを言うんだ!!
ずっと以前同じような光景に出くわし、創り手側の心の大切さに当時私も酔っていましたから。

たかが中学生ではないんです。たった5時間ですが、たったではないのです。
そこに魂を込める「情熱」、つまり何とか素晴しい踊りに仕上げたい。
中学生にも喜んでもらいたい。正しい知識を知ってもらいたい・・・。
踊る真似ごとではなく、ゆかたひとつ着るにしても徹底してその美しさを追求した指導を施す。
教室の踊りがそうですが、波島の想いはこうです

優しい心、想いやる心、敬う心、感謝できる心、
そうした人としての優しさに羽織らせたいのがお着物だと言います。
波島の日本舞踊が美しいのはその心にあると言って過言ではありません。
日本舞踊は心で舞ってこその伝統芸だからです。
波島が作品を創るとき、生徒さんに教えるときのこだわりです。

こうした指針が出来たのもその集大成だと思っています。

波島教室に体験で訪れる外国人観光客の皆さんが口を揃えて感動してくれるのは、着物を着たからではありません。
スタッフや体験指導を担当する者の心根に打たれてくれているのが実情です。

こればかりはコツコツとになりますが、体験の仕事を請け負って8年、見事に定着したようです。

浅草の教室に日本舞踊を習いたいと体験に来る殆どが波島陽子の素晴しさに感動して行かれます。
入会すると殆どの生徒さんが辞めないのもきっと「その心に打たれて」なのだと思います。
習いたい生徒さんを満足させるって正直難しいものです。
よくお客様満足度などと言いますが、こんなことを気にしているようでは満足に結びつきません。
日本舞踊の世界は金がかかる・・・としたイメージが強いのは事実です。
そのやり方では若者に普及しないのです。
安ければ質が落ちる!!一理ありますが、心に上下ってないんですね。
みな平等に楽しんで頂く。しかし、踊りが合う合わないはみなそれぞれです。
その人(生徒)を美しく仕上げようとすればあるんですね!
姿や顔形が違えば仕上るイメージも異なります。
よくご年配の生徒さんが「私はもう他の生徒さんみたいに若くないから」とか言いますが、美しさに対し、
きっと嘆いておられるのかも知れませんが、ご年配の方はご年配だからこそ
若者では表現できない経験から来る味があるのです。
お客様が感動するのはそこなんですね!波島はそこをよく知っています。

デンマークへ行く子供たちが何とか仕上がりますが、それは他の指導者では教られない美しさとしての作品が
そこに姿を現すからに他なりません。
それには、金銭を超えた情熱がそこにないと到底無理なんですね。

指導が終わるとくたくたになります。精魂込めて指導した証しです。
伝えることの大切さをその指導する姿から学びとった時、その作品は彼らなりに花を咲かせてくれます。

特に、若者は様々な夢をもって教室の門をたたきます。
その夢を実現させてあげたいと思う心が何かを伝え、夢の実現に一歩近づいているのではないでしょうか?
気軽に学べる日本舞踊。安く学びたい・・・等々導入は様々です。

入ってみて新たな出会いにみな喜び、生きがいすら覚えるそうです。
簡単に学べる教室からスタートしたはずなのに、いつの間にか夢が膨らんで素晴しい笑顔になっているから嬉しいですね。

 

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